「話を聞く」というアクションよりも「動画を見る」というアクションの方が生徒の記憶に強く残ります。これは研究結果として報告されてもいるし、自分自身でも実感があったりします。また、そこから「自分で考える」というアクションまでつなげられれば、より強く記憶を残すことができます。
そこで今回は授業内で使いやすい動画教材を紹介します。
目次
1.NHK for School
NHK for SchoolはNHKが提供しているコンテンツサイト。理科だけでなく、全教科でコンテンツが用意されているので、全ての先生に一度は見てもらいたいページです。教科で絞ったり、学習指導要領から検索したり、キーワードで検索したり、直感的にコンテンツを探せるようになっているのも素晴らしい点です。
2.考えるカラスは高校物理にベストマッチ
2−1 考えるカラスのコンセプト
NHK for Schoolで見ることができる番組に『考えるカラス』というものがあります。
考えるカラスは、『観察→仮説→実験→考察』という科学の考え方をコンセプトに制作された番組です。
「考える観察」「考える練習」「今日の発見」「デデニオン」の4コーナーで構成されています。その中でも「考える観察」「考える練習」は、授業で即使える内容です。
他はのどかなアニメや歌の癒し枠です。デデニオンが好き!!っていう生徒もいるので見せてもいいかもしれないです。
2−2 授業で使用した例
内容の紹介も兼ねて私が考えるカラスを題材に授業で実践した例を紹介します。
設定:2つのアルミ缶が発泡スチロールの上に、少し離して置いてあります。そこには、ストローで橋渡しをして、糸で画びょうをつるすセットをしてあります。
皆さんも考えてから、動画を見てみましょう(6:17〜)。
https://www.nhk.or.jp/rika/karasu/?das_id=D0005110314_00000
動画を見ていただくとわかる通り、この番組では、実際の現象は見やすく収録されていますが、「なぜこうなるか」の解説は絶対に行いません。これを見た後、なぜこうなるのか、を生徒に考えさせてペアワークなり、グループワークなりで発表しあってもらうと、動画を見るというアクションから、考える、発表するというアクションまでつなげることができます。
Think-Pair-Shareはアクティブラーニングの手法で、初めてでも生徒が割とうまく動いてくれるので、アクティブラーニングに慣れていない生徒や先生の集団でもオススメの手法です。手順とポイントは以下の通り。
手順①
テーマの内容を1人で考える(Think)。
手順②
2人組(pair)になって、自分の考え方を伝える。そして考えを洗練させる。
手順③
4人組や6人組にグループを広げて、Pairで話し合ったことをより大きいグループで共有する(Share)
手順④
個人に戻して、今回のテーマの答えを筆記させる。
ここで絶対に外してはいけないポイントが手順①と手順④です。
手順①は
おしゃべりが苦手な子でも何かしらの発言をするための準備。
賢い子の意見をもらうだけの他力本願な姿勢にしない。
という2つの目的があります。
手順④は個に戻すことで、個人の理解を確立させます。
グループワークを行うと、クラスの大多数が「わかった」状態になったように見えます。
しかし実際は、ほとんどの生徒が「わかったつもり」状態でとどまっています。
そこで個人に戻して筆記させることで、「わかったつもり」状態から、きちんと整理された状態にすることができます。
この手順①、手順④を省略すると、形だけのアクティブラーニングになり、学習効果は思ったように現れないので、もし行う際は注意してください。
このThink-Pair-Shareが考えるカラスの内容とベストマッチしています。そこまで時間をかけられないなら、教えあい(Peer Instruction)でもいいと思います。教えあい(Peer Instruction)の手法はまた別の機会にまとめていきましょう。
4.使えそうな回の紹介
最後に考えるカラスで実際に授業に使えそうな回と、該当の分野をリストアップします。
#4 考える練習「浮力の反作用」
#5 考える練習「気体の圧力」
#6 考える練習「運動方程式」
#8 考える練習「電磁誘導と電磁力」
#9 考える練習「屈折率と像」
#10 考える練習「慣性力」
#12 考える観察「作用反作用の法則・つりあい」
#13 考える練習「慣性系」
#14 考える練習「静電気(この記事で紹介した動画)」
#16 考える観察「光の反射」、考える練習「逆起電力、電気エネルギー」
#19 考える観察「磁力(クーロンの法則の学習に適している)」
生徒が能動的に考えを巡らすいい教材になると思います。ぜひぜひ。