パンダの頭蓋骨とベクトル【高校物理の雑談ネタ】

生物関係の先生からいただいた雑談ネタを紹介します。

生徒に話すタイミングは、力のつりあいでベクトルの分解が出てきた時です。

科目横断というキーワードも教育改革には出てきているので、生物と物理のつながりを示すいい例にもなると思います。

1.草食動物と肉食動物の違い

一般的な話として、草食動物の歯は平べったく、肉食動物の歯はとんがっています。人間でいうと奥歯は平べったく草食動物の持つ歯、前歯や糸切り歯(犬歯)はとんがっており肉食動物が持つ歯だといえます。

平べったい歯はすりつぶしや咀嚼の役割、とんがっている歯は切断する役目があり、食べるものに合わせて歯の形が進化していったと考えられます。

物理的には、圧力がキーワードになりますね。力が一点に加わると圧力も大きくなり、ものを切断するような効果が高くなります。

2. パンダは肉食?草食?

パンダは肉食でしょうか、草食でしょうか。この問いは生徒に投げかけてみてもいいでしょう。

笹を食べてるイメージが浮かべば、草食という答えが出るだろうし、熊っぽいというイメージが浮かべば肉食という答えが出るでしょう。

実態として主食は笹ですが、肉を食べることもできる雑食のようです。

この後の話は、笹が主食であり、基本は草食であるということで進めます。

3. パンダの頭蓋骨

先日、パンダの頭蓋骨を3Dプリンターで作成したものを先述の先生に見せてもらいました。それが以下の写真です。

なんだか思ったよりほっそりしています。頭頂部がとんがっているのも特徴的です。

注目の歯をみてみます。

こんな風に実際に触って動きを再現できるのが3Dプリンタ標本の魅力だそうです。これだけで面白い!!
すり潰すように顎を左右に動かせる種と、そうでない種があるようで、それも3Dプリンタ標本で実感できるそうです。

さて、歯に注目すると、主食が笹(草)なのに、とんがっている歯があります。笹(草)を食べる際には不便な形です。なんでこのようなアンマッチになっているのでしょう。

4.竹を噛み砕く

ここで物理です。パンダは竹も食べます。そして竹を食べるには大きな力が必要になります。それは、竹自体が固いこともありますが、それよりも竹が円形であることによる影響が大きいです。

円形の竹に、噛み砕くような力を加えてみましょう。

上図のように力を加えると、円形であることで、力が下図のように分解されて、周りの部分に影響を与えます。

これだけみても、よくわからないので、比較のために、直線的な板に力を加えた状態をみてみましょう。

上図のように、直線的な板に力を加えてると、物体を引き延ばしたり、折り曲げたりする作用になります。そして引き伸ばしたり、折り曲げたりして物体を破壊することは、比較的簡単に行えます。

折り曲げの動作は、原子のつながりが弱いところに集中して力がかかることで切断することができますが、圧縮は原子全体に力が分散されてしまい、結合を切るには大きな力が必要になるのです。

こういった理由から、パンダは竹を噛み砕くために、とんがった歯が必要になったと考えることができます。

5.もう一度、円にかかる力をみてみよう

ここで話を終えてもいいのですが、せっかくなので、ベクトルの話をもう少し深めます。


この図を見ると、もともと加えてた力ベクトルよりも、分解した後の力ベクトルの方が大きいことがわかります。点線の矢印より、左右の矢印の方が長いですね。噛んだ力より大きな力で竹を圧縮しているということになります。

しかし、「圧縮の方が破壊しづらい」という条件をひっくり返すほどには力を増やすことはできず、円形の方が頑丈な形となっているのです。

アーチ型の橋などは、この力関係を使って、強い力で地面に押し付けらるような構造にしています。

6.まとめ

ネタをくださった先生によると、パンダの頭蓋骨は例外まみれで、骨の観察から一般的な種の特徴を判断しようとするような授業には向かない、ということでした。
例外というのは際立って脳に残りやすくて、大切にしてほしい基本を薄めてしまう傾向があるので、確かに考えものです。

しかし、物理で扱うにはとてもいい題材だと思いました。ベクトルの分解、ベクトルの長さによる大きさの考察、などは特に生徒に入りにくい概念なので、身近なものと結びついて楽しく感じてくれそうです。


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