定期テストは重要、教員も生徒もわかっていることと思いますが、なぜ重要なのか、どのような教育的意義があるのか、そして、有効な定期試験作成のコツは?
私なりの解釈をまとめていきたいと思います。
目次
1. 定期テストはシラバスとなる
定期テストは、生徒の成績をつける最も大きな材料です。しかし、そのことよりも、シラバスとしての役割を持っていることを教員は意識すべきです。シラバスというよりも、勉強法のコーチングといった方が適切かもしれません。
生徒は、試験で出ることがその教科の勉強で必要なこと、と考えるからです。
大きなパターンとして以下の2つがあります。
配布してある問題集から、ほぼそのまま出題するテスト
この場合、生徒は配布してある問題集をしっかりやればいい科目なんだと判断し、次の試験から、問題集に特化した対策をとるようになります。
教員が、問題集に特化して演習することを望んでいる場合、有効なテストになります。一方で、解法の理解ができなかった場合、丸暗記をしてきます。生徒は得点に直結する場合、それに意味がないとわかっていても丸暗記を選択する時があります。
初見問題を出題するテスト
この場合、生徒は2つの解釈をします。解法の丸暗記ではいけない、概念や解法を理解し、初見問題に対して適用する力をつけないといけない科目なんだ、というパターンと、問題集を解くことは無駄なんだ、頭が良くないと取れない科目なんだ、というパターンです。
教員としては、前者の『きちんと理解して、適用する力をつけましょう』というメッセージを込めているはずですが、後者の解釈をする生徒は多いです。
事前にシラバスを配理、丁寧に勉強方法を伝えても、テストの内容で後者の判断をします。配布、説明したシラバスよりも、テストの形式の方が生徒へ与えるメッセージは強いです。
問題集を勤勉にやることも、概念の理解に努めることも、大切にしてほしいので、定期テストは問題集からそのまま出す問題と初見問題の融合した形式のものが多いでしょう。
2. 問題形式によるコーチング
ここまでの2つの形式以外に、問題形式でも生徒にメッセージを伝えることができます。
計算問題
よくある問題集(セミナーやリードα)はほとんどの問題が計算問題です。なので、計算問題を多めに出題したら、問題集をしっかりやろう、というメッセージになります。
グラフ選択、グラフ記述問題
グラフ選択の問題を出題すると、単純な計算の技術だけではなく、物理量の相関を意識してね、というメッセージを送れます。
物理では横軸が時刻tのグラフが多いですが、時間が経つと物体はどのような運動をするか、などを式からイメージすることが大切と伝えられるのです。
ちなみに、グラフ記述よりもグラフ選択の方がいいです。記述だとプロット打つ作業になりがちで、選択だと相関を考える問題になりやすいからです。
◯×問題
◯×問題は、主に現象理解をしているかを聞くことになります。
例えば、
「真水と海水に、形も重さも同じ物体を完全に沈めたところ、受ける浮力は海水の方が大きかった。○か×か」
「真水と海水に、形も重さも同じ物体を沈めたところ、両方とも水面で浮かんだ。受ける浮力は海水の方が大きい。○か×か」
という出題をします。
すると、浮力の原理の理解(1個目の問い)を聞きつつ、浮かぶことの理解(2個目の問い)を聞くことができます。
数式の概念を頭から遠ざけて、概念の理解を聞くことができます。
ちなみに◯×問題の正答率は極端に低いです。初学の生徒は、教員が思っているよりも現象と原理を結び付けられていません。
途中計算を書かせる記述問題
数学では証明問題などに代表されるように、記述に厳密なルールがあります。
しかし、物理では記述に厳密なルールはありません。なので、物理の記述を定期試験に設ける意味はあまりないと言えます。
仮に出したとしても、記述問題の持つ役割は『計算ミスを起こしやすい問題で生徒に部分点をあげるため』がメインで、おまけとして『解答の丸暗記をしてしまう生徒を、解法の丸暗記をするレベルまで引き上げる』といった程度になります。
ここまで説明してきたものよりも、物理の理解の助けになるメッセージ性は薄く、記述問題はあまりプラスの学びにならないというのが正直な感想です。
3. 定期試験作成のコツ
さて、以上のことを踏まえて、定期試験作成のコツをまとめます。
① 問題形式が生徒にどんなメッセージを送るか、理解する
② 全ての問題で、どんな意図の問題か意識して作問する
③ 渡してある問題集から半分くらい出す
④ グラフ選択問題・作図問題を入れる
⑤ ◯×問題を入れる
⑥ 記述は部分点をあげるくらいの意味しかないので最低限で
これに加えて、授業内で概念理解問題を扱っているなら、概念理解問題も出題してあげた方が良いです。
概念理解問題は、教材データベースページで紹介してますのでご覧ください。
これらの意識で試験を作ると、平均点が55点前後になってしまうと思います。結構難しいです。
でも模試で結果が出ます。受験にももちろん活きます。
定期試験は、どんな勉強をしてほしいか、何を理解をしてほしいかを、伝える最大のチャンスであり、それが生徒に伝われば、生徒の自習の質も上がっていきます。
以上、定期試験について、私が意識していることでした。最後までお読みいただきありがとうございました。