中学理科で特に有効になアクティブラーニングのツールを、生徒の書いた実例とともに紹介します。
1. 中学理科は退屈になりがち??
ツールの紹介の前に、中学理科の特徴を見てみます。授業する側にとって悩ましい特徴です。
・生徒がすでに半分くらいの知識を持っている
特に中学受験をして入ってきている生徒はこの傾向が強いです。中学理科で学ぶことは、半分くらいは受験で必須の知識であり、すでに習っています。
すでに習っていることを改めて授業で教わるのは中々につまらないでしょう。生徒も、「この授業のことはすでに知っているなぁ」という感想になりがちです。
・生徒により習熟度が違う
すでに習っていると言っても、中学受験での知識は、生徒によってかなり差があります。なので、教科書を無視して授業をするのもよくないです。
すると、クラスの中で新しい発見がある生徒と、すでに習っていて退屈な生徒が共存してしまうのです。
さて、こんな難しさがある中学理科ですが、ワンページポートフォリオ評価(One Page Portfolio Assessment:以下OPPA)というツールがすごく有効に使えます。
生徒が学習することの意義を実感できて退屈感がかなり減ります。
2. OPPAとは
OPPAとは、1枚の用紙の中に授業前・中・後の学習履歴を残し、自分の学習を自己評価させる用紙です。
山梨大学大学院教授 堀哲夫 先生の作成したツールです。
(参考文献:教育評価の本質を問う 一枚ポートフォリオ評価OPPA、
学びの意味を育てる理科の教育評価―指導と評価を一体化した具体的方法とその実践)
私は以下のようなプリントで実施しています。
(単元全体のプリントはこちら)
3. 利用の流れ
まずは単元に入る前に『学習前』の項目を書かせます。
設問は「知っていることを書き出してみよう」や、「キーワードを提示して、その言葉を使って書かせるか」などのバリエーションがあります。大事にしてほしいキーワードがあるなら後者の方が良いでしょう。
光の場合なら「反射・屈折という言葉を使って文章を3つ作ってみよう」などの聞き方ができます。
そして、授業の進行とともに、『各回のまとめ』を埋めていきます。授業の最後にリフレクションシートとして書かせてもいいですし、次の授業の頭に復習として書かせてもいいです。生徒に1つ1つきちんと取り組ませるために、授業内で時間をとることが大切です。
最後に全単元が終わったあと、『学習後』の項目を書かせます。
必ず学習前と同じ問いにします。
ここで、どんなに塾でしっかり勉強してきた生徒でも、全部を最初から知っていた、という生徒はいないので、少なからず新たな発見があったことを自覚できます。
4. 生徒の書いた実例
実際に生徒が書いた実例があったほうが、どんな効果があるかイメージしやすいので、紹介します。
(新しい知識が増えた生徒の例)
法則の内容や、現象名を書き出して、新しい知識が増えていることを実感できています。
(文章に書き出すことに意義を感じている生徒の例)
文章にしてまとめることが、大切であることを実感してくれています。この取り組みを通して、自習する力を向上させる機会になっているといえます。
(うまく書き出せなかった生徒の例)
このように、うまく書けない生徒もいます。しかし、自己評価をすることで、あまり理解していないことを実感し、問題集を解こうという結論に行き着いています。
(文章はあまり変わっていないけれど、感想が書いてあるもの)
学習後もあまり変わっていない生徒もいます。あまり真剣に取り組めていないのかもしれません。しかし、感想を書いてくれているので、そこにフィードバックをすることで、モチベを高めてあげられるようなきっかけにできます。
5. まとめ
実例とともに、OPPAについて紹介しました。
各授業で10分くらい時間を作れれば、この用紙は密度濃く埋まっていきます。
そして生徒が理科を学ぶ意義や、実験の意義、振り返りの意義を実感したり、現在の自分をメタ認知する機会となります。
非常に有効なアクティブラーニングツールとなるのでぜひ試してみてください。
『アクティブラーニング = グループワーク』という風潮がありますが、このような取り組みも生徒が能動的に頭を動かすアクティブラーニングと言えます。
流行が過ぎ去り、あまり言葉を聞かなくなってきていますが、良い授業を作るために必要な要素であることは変わらないはず!
今後も色々なツールを紹介できればと思います。