物理って計算がいっぱいだから無理。そんなことがよく世間で言われていますが、そんなことはないなと思っています。
今回は私が実際に生徒に出す計算以外の問題を、出題形式ごとに紹介します。(今回ボリュームが大きくなってしまいました。疲れたら日を分けて見てもらえると嬉しいです)
目次
1 並び替え問題(公式を要するもの)
相対速度の問題です。解答は A > D > F > E > B = C
A:+11 m/s B:−17 m/s C:−17 m/s D:+8.0 m/s E:−12 m/s F:+4.0 m/s
公式を使って計算を要求します。なんとなくの直感で答えると正負が逆になったりして間違えます。
公式を覚えたてのタイミングで出題して、公式を使う練習を6回してもらいます。
2 並び替え問題(公式を要するように見えて実はいらない問題)
浮力の問題です。解答はF > E > A = B = C >D
A:30 (g重) B:30 (g重) C:30 (g重) D:20 (g重) E:40 (g重) F:50 (g重)
浮力の公式は、
(浮力F)= (流体の密度ρ)×(沈んでいる部分の体積V)×(重力加速度g)
公式の形だけ丸暗記の生徒は、Vを単純に比較してしまい間違えます。
意味も正しく覚えておけば、公式暗記でなんとかなる、と思っている生徒は(沈んでいる部分の体積V)が書いてないからわからない、と苦しみます。
でもこの問題は「物体が浮いていること」に着目して、「おもりと箱の合計の重さを、浮力が支えてくれている」と状況を判断できれば、グラムの部分を足し算した量を比べればいい、という結論にたどり着きます。
公式をきちんと学んで、練習問題をこなして、バッチリ使えるようになった後に出題して、「公式をマスターした」という段階から「覚えた公式に固執してはいけない、物理現象の分析には今まで習ってきたこと全てが関わってくるのだ」ということを感じてもらう問題です。
3 並び替え問題(公式を使えば細かい値が出せるが、使わなくても答えは出せる問題)
放物運動の問題です。解答はB = C > D > E = F = A
水平投射と分類されるものですね。落下時間は、鉛直(縦)方向に着目して、
公式
を使えば求めることができます。しかし、これは高い位置から打ったものほど、地面に落ちるまでの時間が長い、と考えることもできるので単純に人の高さが高い順に並び替えてもよいのです。
誤答として想定しているのは、打ち出したときの速度で並び替えるや、高さと打ち出した距離で割り算するなど、いろいろです。
こういう問題は、公式を習ったすぐ後、定期試験直前、定期試験終わった後、どのタイミングでも良い効果があると思います。授業の時間数に余裕があれば、解法が複数あり、誤答のパターンも多いので、グループワークをして、他の人と考え方を共有し合わせることも有意義でしょう。
追加問題として、水平方向に一番飛ぶのはどれ?と聞いたら、今度は公式を使った厳密な計算が要求されます。お手軽に解けない問題に早変わりして、グループワークの活性化になります。
4 ○×問題
運動量保存の問題です。
運動量が保存するのは、ウ、エ、オ。それ以外は保存しません。
○×問題の難易度はとてつもなく高いです。公式を覚えているか覚えていないかが関係なく、言葉を正しく理解していないと解けないからです。
物理の先生は公式を教えるとき、必ず原理から公式の成り立ちを説明しています。しかし生徒は結果の公式部分が大事と考えてしまいます。なので、公式を習ってちょっと使えるようになった直後に、こういう問題を出題します。公式の成り立ちを理解することが大切だと感じてもらえます。
5 概念理解の問題
剛体の問題です。解答はC
BかCかで迷って欲しい問題です。缶の重力と、粘土の重力でモーメントがつりあうことが回転しない条件だ、と見抜ければOKです。
難易度により、生徒に出題するタイミングは変わりますが、定期テストの前に必ず小テストや、協働学習で扱っておきたい種別の問題です。原理を講義で伝えて、生徒も練習問題を解けるようになった、しかし概念をきちんと理解はしていない、ということがないように、このような問題を出題しておきたいです。
計算問題は解けるけど実は概念がわかっていない、となりやすい部分を調査して、それを補うように問題を作らないといけないので、問題制作は大変です。
他の分野の概念理解問題は教材データのページを参照
6 図表・グラフの問題
具体的な値が出てこない問題です。何が起こっていて、何を答えなきゃいけないのかをきちんとイメージできていないとむずかしい問題です。そしてイメージをする力というのは、得意不得意の個人差が大きいと感じます。(子供の頃にどれだけ積み木とかボールで遊んでいたかが関わっていると勝手に思っています。)
不得意な子がいる問題なので、グループワーク形式で「あぁでもないこうでもない」という議論をしてもらったり、得意な子が不得意な子に自分の言葉で説明する機会にしたりします。また、定期テストの出題でも有効でしょう。不得意でも出来るようになるように頑張りましょう、という教員からのメッセージになります。
終わりに
計算問題だけでは物理の力が育たない、という持論を紹介しました。出題形式で、何を問うかも変わり、生徒にはいろいろな問題に触れてもらいたいので、まだまだ問題研究をしていく必要がありそうです。頑張っていかねば。