2020センター物理 分析と感想 後編【第2問〜第6問】

2020年センター試験の分析と感想の後編です。分析と感想なので、解説がメインではありませんのでご了承ください。

前編はこちら

第2問

目新しい装置を理解できるかの問題でした。受験生にとっては『導体』と『導線』が同じ振る舞いをすると考えることが分かれ目だったと思います。
注目は問2です。

0倍の選択肢があることが秀逸だと思います。QやRから端子が出ているので何も電気がたまらないのではないだろうか、という謎の直感をはたらかせた生徒が選ぶ答えです。

落ち着いてこの装置を回路図に直すと、以下のようになります。

P、Q、R、Sの導体の部分が、導線であると理解できれば、このような作図ができて、あとは典型的なコンデンサーの問題として取り扱えます。

回路図への変換ができたあとで、さらにコンデンサーの問題を解くので、思考のSTEPが2段階あります。このような問題だと、正答率は落ちるような傾向にあるので、他の受験生と差をつけるためには落としたくない問題といえます。


続いてB問題です。


この問題の正答率も悪いと思います。電磁気の分野でのエネルギーの扱いが、生徒の中で軽い傾向があるからです。電磁誘導のエネルギー収支をはじめとして、電磁気の分野では、しつこいくらいにエネルギーについての話を教員からしてあげる必要があります。

この問題に関しては、進行方向と90°の力での運動なのでエネルギーの増減がないという力学的な概念理解が必要です。

一方で問4では極板間での電荷の加速を聞かれているので、エネルギーが増加します。電荷にはたらく力が進行方向にそっている、というように力学的な説明ができるようにさせておきたい問題です。

第3問

昨年度から、この兄弟が登場し始めています。
文科省の発表する思考力問題のポイントに「日常生活に関わる科学現象に、知識を適用できる」というものがあるのですが、こんな風に人を出せばそうなると考えていないか、少し心配になります。
来年の共通テストでも、きっと登場するのでしょう。はたしてどのように出るのか。
問1


ドップラー効果の導出です。頻出の型ではないので、少し戸惑った生徒もいたかもしれません。ドップラー効果の導出は本当にたくさんの型があり、全てを生徒に教え込むのは無駄な負担になります。

どのように指導していけば様々な形の導出に対応できるか、その結論は出ていませんが、波源が動く場合波長が変わり観測者が動く場合は観測者にとっても見かけの速さが変わる、というポイントを押さえておくことが必要かと思っています。

それがわかっていると、今回の第1問で、波長の変化は気にせずに、観測者と波の位置関係に注目すれば良い、と考えられ問題の読み取りの助けになったかもしれません。

問2のグラフの問題はドップラー効果というよりも、波の式v = fλへの理解度による差が出る問題だと思います。

 波の式の導出
1回の媒質の振動で波が1つ発生し、1回振動する時間はTとなる。このことから波1つ分の長さは、(波長λ) = (波の速さv)×(周期T)となる。これを変形して、(波の速さv)=(振動数f ) × (波長λ)

この流れを理解せずにv = fλを丸暗記している生徒は、この問題に対応できなかったと思います。


問3、問4は典型的な光の干渉の問題だったので、正答率も高いでしょう。引っかかるポイントも少ないです。
参考までに、問3、問4の問題設定も貼っておきます。姉が登場しますが、特別なアクションはしません。

第4問

少し計算に手間のかかる力学の典型問題です。第3問までは概念や思考力で差がでるような問題が多かったので、少しここだけ毛色が違う感じがしますね。

何回も解いたことがある、衝突と円運動の問題だと、一目でわかります。

次のパートの問題もわかりやすいです。

何回も解いたことのある力の見出しの問題だと図だけでわかります。

この大問は完答したいです。

第5問

2年前に東大が水中での気体の振る舞いについて扱ってから、この手の問題をよく見るようになりました。浮力を公式ρVgという理解で済ませている生徒には少し厳しくなります。
この大問のかわりに選択できる第6問と比べて、明らかに難しいです。

この問題を生徒に演習させるときは、容器にはたらく力のつりあいと、容器内の液面での力のつりあいの2式を立てて、考えられるように指導をしたいですね。


このような感じ。立てた式を立式すれば、問2も問3もスムーズに解けるはずです。
容器は上部の大気と、内部の空気には押されますが、水とは直接触れていないので水圧による力を受けません。

第6問

時事問題として、ニホニウムが題材になっています。しかし、ニホニウムが特別に問題に絡んでいる訳ではありません。

原子分野は他と比べて概念理解や思考力を問う問題は作りづらいのか、パパッと解けてしまう問題になっています。

受験生が原子分野を習うのが、どうしても高3の終盤になるので、いざセンター試験で原子分野を選択するのには、かなり勇気が必要になります。しかし、かなり得点しやすいので、センター前に練習しておくのはかなり有効に思えます。
特に今年は、第5問に手が出ない生徒もいそうだったのでなおさらです。

まとめ

以上、ざっと書いた感想と分析でした。YouTubeチャンネルで解説動画をアップしております。よければご覧ください.


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