担任の経験の中で、今までで一人だけですが、不登校の子が学校に復帰したことがありました。その生徒とのやりとりをまとめてみます。ちょっと繊細な話なので淡々とまとめます。
1 生徒の背景
私は中2の担任としてその生徒と初めて出会いました。その生徒は中1のときから不登校で、中1でも最初の3日ほどしか学校には来られていなかったようです。
2 最初は図書館にきてもらった
最初のコンタクトは電話です。そしてお互いに緊張するので、会話はお母さんを通して伝言ゲームのように行いました。直接電話で、なんてことはその生徒にとって負担にしかなりません。
そうやって亀のようなあゆみで言葉を交わしていく中で「教室は無理でも、図書館ならどうだい」という話が出ました。週に2回くらいのペースで、時間割でいうと3限と4限の2時間だけ、など非常に短い時間に限定して図書館にきてもらえるようになりました。
図書館に来られるようになったのは非常に幸いでした。直接お話ができると、亀のあゆみだったコミュニケーションが、猛烈に加速しました。
教員が「焦っていない、怒っていない、困っていない、あなたがきてくれると嬉しい」ということを、顔に出して話ができるので、生徒にプレッシャーをかけずにコミュニケーションが取れるようになります。
[box class="green_box" title="ポイント"]直接会えるまでは進展がほぼないことを覚悟する[/box]
3 他の生徒の登校禁止日に教室に行った
図書館には慣れていったのですが、流石に教室は難しく1学期は1日も教室には行けませんでした。そこで、他の生徒が登校禁止で部活も禁止の日にこっそり学校にきてもらうことにしました。
とりあえず自分の教室に入ってみよう、という作戦です。
約束した日、約束通りに学校にきてくれましたが、教室に近づくにつれて、表情には緊張が増していました。ドアを越えて教室に入るときは本当に本当に不安そうでした。ドアの前で立ち往生です。
でも他に生徒は誰もいないので、いくらでも時間をかけられ、じりじりとドアを越えて、無事に教室に入ることができました。
そのあとは、特別な会話をすることなく、自分の席に座ってもらって、私は教卓にある椅子に座って、15分くらいただ外を眺めていました。
その日はそれで終わりです。生徒からの感想も特になかったのです。しかし、教室に入った瞬間の生徒の表情は、不安と嬉しさが入り混じり、大きな決心によって足を運んでいたことがわかり、大きな意味があったと感じています。
[box class="green_box" title="ポイント"]生徒の登校禁止日は大チャンス[/box]4 クラスの普通の生徒に図書館にきてもらった
2学期のはじめくらいに、クラスでとても朗らかで、少し大人びた生徒に声をかけ、「○○さん(不登校の生徒)とお話してくれないか」とお願いをしました。もちろん不登校の生徒には事前に打診をしてからです。
そして、図書館にきてもらい雑談をしました。
お互いに名前を言うだけで話のネタが切れてしまいました。お互いに失笑してました(笑)
失笑ののち、次の学校行事として文化祭が控えていたので、クラスが文化祭でどんなことをするか、などを話していました。
お互い緊張していましたが、教員と話しているときよりも、緊張は少ないように見えました。
話をしてくれた生徒は将来的に、不登校の生徒が教室にきたときに、お迎えをしてくれる係になってくれました。
[box class="green_box" title="ポイント"]タイミングをみて生徒同士のつながりを作る[/box]5 いざ教室へ、しかしそのハードルは高い
そんなこんなで2学期の半ばに入り、授業に行ってみようか、という話になりました。1限からなんてことは無謀なので、図書館に3限にきて、ゆっくり心を落ち着かせて、4限だけ授業に出る、という作戦を立てて挑戦することにしました。
作戦決行の日、これるかな?とそわそわしていると、その生徒は来られませんでした。今まで来られていた図書館にも来られませんでした。
しかしここで、絶対がっかりはしていけないと思います。
その日は、「気にしなくていいんだよ。頑張ろうと思って、朝からこの時間のことを考えているのは大変だったよね」という声かけにとどめて、また違う日の図書館で、「次はいつ挑戦しようか」という話をしました。
そして4回目?5回目?くらいの挑戦で教室で授業を1時間だけ受けることができました。(ちなみにそれは私の授業でした。)
図書館でお話をしてくれた生徒には、作戦を立てた日には毎回「今日○○さんくるかもしれないから、きたら声をかけてあげてね」ということはお願いしていました。その生徒も懲りずに毎回笑顔で「わかりました!」と答えてくれていたのが印象的です。
かくして、初の教室での授業を受ける、を達成しました!!
[box class="green_box" title="ポイント"]うまくいかなかった時ほど、生徒の気持ちをきちんと探り、焦らせない[/box]6 その後
初めて授業で教室にこられた日からは、教室にこられる日も少しずつ増えていき、行事にも参加ができたりと、着実にステップを踏んで改善していきました。
思い返すと、教員の力、教員の頑張りでどうにかするものではなく、不登校の生徒本人の頑張りたい気持ちを折らないこと、クラスの子とのつながりを作ってあげることが大切である。そう思います。
実際、私はその生徒に何かをしてあげられたとはあんまり感じていません。その子自身が強い生徒だったな、お迎えをしてくれた生徒は本当に優しい生徒だったな、というように思います。
以上が私が経験した不登校の生徒が復帰したエピソードでした。参考になる部分があれば幸いです。
↓次回記事「不登校生徒に対して、してはいけない3つのこと」